2001年12月 尾瀬の自然を守る・山ゆりの会
丹沢の林道
丹沢林道調査の記録
かつて、丹沢で最も自然破壊を起していたのは、林道開発であった。その影響は、登山者による登山路の踏みつけ
などとは桁が違う。ブナ林などの立ち枯れとも違う。神奈川県(一部は国)が計画し、実行した
100%人為的行為による破壊である。植林・人工林の管理や木材を搬出するに必要な林道はある。
しかし、丹沢山中に開設された林道は、ほとんどが林業に役立っていない。2006年現在、全く利用されず
荒れ放題の林道も多い。
以下は、山ゆりの会が、1994年から2000年にかけて、十数回にわたって現地を歩い時の
記録を含め、全体をまとめたものである。(2006年7月 草野)
丹沢には林道がいくつあるか
神奈川県森林計画(平成5年〜15年)による林道整備計画では
丹沢を含む市町村の計画数は合計125路線である。
丹沢を含む市町村別で見ると以下の通りである。
市町村名 |
林道の路線数 |
市町村名 |
林道の路線数 |
津久井町 |
28 |
伊勢原市 |
9 |
秦野市 |
19 |
厚木市 |
10 |
清川村 |
14 |
松田町 |
8 |
愛川町 |
7 |
山北町 |
30 |
1997年11月神奈川県は林道整備計画を見直した
(1)林道を以下の3つに区分する
区 分 |
林道の利用 |
路線及び延長 |
開設中の林道 |
既設林道 |
林業振興型林道 |
専ら林業活動に利用されている林道 |
水無堀山、檜山など9路線 25.6km |
唐沢、足柄、久野など32路線198.8km |
地域振興型林道 |
専ら生活道路として市町村道的な役割を担っている林道 |
|
薬師、土佐原など5路線 29.0km |
併用型林道 |
林業活動と生活道路の両方の利用を担っている林道 |
上秦野、東南 2路線 5.5km |
神の川、和田など18路線 94.4km |
計 |
|
11路線 31.1km |
55路線 322.2km |
(2)今後の新規開設は林業活動に利用される「林業振興型林道」のみとする。
ア 水源の森林つくりをめざし、広葉樹も含めた森林の適切な管理を効率的に行うことの出来る基盤施設としる。
イ 林道の開設は、経済性を考慮し、「費用対効果方式」を採用する。
ウ 経済性や環境面の変化に対応し、事業途中の見直しを行う。
エ 地域振興を目的とした市町村道並の構造規模の林業開設は行わないものとする。
(3)既設林道については必要最小限の整備を尾もなう。
(4)具体的な見直しとして、整備目標を変更する。
路線整備目標:平成37年度末で従来の859kmから平成49年度末810kmに変更する。
ア 平成8年度末の既設林道延長:578 km
イ 平成9年度から平成48年度末までの新規開設目標:232 km
以下は「山ゆりの会」が1994年から2001年の8年間に実際に現地を歩いて調査した
林道のうちの一部の記録でる。
神の川林道
- <<神の川林道の概要>>
- (1)総延長距離 :18192m(約18km)
- (2)工事の開始年度:1944年
- (3)全線開通:1970年
- (4)最高海抜高度 : 830m(犬越路林道との接続点)
-クリック-神の川林道MAP(別紙)
- <<神の川林道の特徴>>
- (1)犬越路林道と犬越路トンネルで接続し、津久井側から山北町の箒沢、中川温泉を経て国道246号線に
ぬけられる、将来の利用価値の高い林道である。
- (2)大半が未舗装である。
- (3)橋(日影沢橋、檜皮橋ほか)トンネル(孫衛門トンネル、小洞トンネル)など 部分的に林道とは不釣合いな
豪華な作りとなっている。
- (4)自然公園法指定の第1種特別地区に隣接している。
犬越路林道
- <<犬越路林道の概要>>
- (1)林道の種別:自動車道2級
- (2)道路の幅:5.2m トンネル内6m
- (3)総延長距離:3004m(約3km)
- (4)犬越路トンネルの長さ:794m
- (5)工事の開始年度1966年
- (6)前線開通:1969年
- (7)最高海抜高度:930m(犬越路トンネル)
- (8)利用区域面積:274ha
- <<犬越路林道の特徴>>
- (1)古くからの甲斐と小田原を結ぶ峠「犬越路:海抜1060m」の東約800mに位置する。
- (2)犬越路トンネルによって「神の川林道」に接続し、津久井、道志と結ぶ、一本の峰越林道で
、将来の整備次第では、観光的利用価値の高い林道である。
- (3)全区間舗装されている。
- (4)中間点とトンネルの入口に、林道とは不釣合いな「あずまや」風の休憩場所が設けられている。
- (5)海抜標高が最高930mと丹沢山中の峰越林道としてはもっとも標高が高い。
全域では東沢林道が約950mともっとも高い。
- (6)自然公園法指定の第1種特別地区に隣接している。
東沢林道
- <<東沢林道の概要>>
- (1)全長:5640b
- (2)道路幅:4b 2級道路
- (3)利用面積:820f 86lが県有林
- (4)工事期間:1964年から1971年
- (5)最高海抜高度:約925m 丹沢山中の林道では最高地点
- ・檜洞丸クリーンハイクの下りの途中標高約1100b地点から、東沢林道へ降りる。降り立った地点から100bほどで東沢林道の終点。標高約925bで、丹沢山中の林道では最高地点ではなかろうか。
- ・30年を経ているせいか、大きな崩壊個所はなく安定している感じである。舗装もされていず、コンクリート壁もなく、ガードレールも少ない。
丹沢の沢で良くある何段にも連続したコンクリート堰堤はここにも一箇所あるが、100l土砂で埋まっていた。
- ・一般道(白石林道)からの入り口には、丸太と板を贅沢に使った林道表示。今丹沢は大半の林道は入り口にゲーとを設け一般車を遮断している。
- これはいいとしても、どこにいっても、この贅沢な看板には違和感がある。(2001年5月27日の調査)。
秦野峠林道
- <<秦野峠林道の概要>>:神奈川県唯一の広域基幹林道として作られた。
- (1)林道の種別:自動車道1級
- (2)道路の幅 : 5m
- (3)始点:松田町 寄(やどりぎ) 終点:山北町 玄倉(くろくら)
- (4)総延長距離:14956m(約15km)
- (5)工事開始年度:1970年
- (6)全線開通:1995年
- (7)最高海抜高度:750m(秦野峠)
- (8)林道管理者:足柄上地区行政センター
-クリック-秦野峠林道MAP
-クリック-完成を報じる新聞報道
- <<秦野峠林道の特徴>>
- (1)林業目的以外に新観光地として丹沢湖と寄自然休養村とを結ぶ動脈として広く
利用されることを明記して開設された。
広域基幹林道として65%という効率の国庫補助を受けて開設された目的が林道ではなく、
一般車道あるいは、観光車道にあるように思われる。
- (2)そのために標高約750mの秦野峠を峰越えしている、いわゆる「峰越林道」である。
- (3)道路幅5m、舗装道路である。
- (4)奥地林の開発をうたっているが、スギなどの人工林はまばらに存在するだけで、
全体としては広葉樹の自然林が多い。秦野峠付近にはブナ林もある。
水無堀山林道
2000.9.22、水無堀山林道整備事業県中止を決定
農水省は9月22日、与党による233の公共事業見直し対象のうち、
同省所管の70事業のうち未発表の63事業を発表
、この中にクマタカの生息調査の為に昨年度から工事を中断していた表丹沢の
「水無掘山林道整備事業」が含まれていた。これを受け県は9月22日
、同事業を今年度末で中止することを決定したというもの。クマタカ調査のための2年間の中断の上に、
公共事業見直しという、中止するに格好の理由がついたというところだろう。いづれにしても、
上秦野林道の中止に続き自然環境の保全を求める私たち広範な運動の成果の一つである。
同林道は、計画路線長5260mで総事業費13億円、半分を国が出す国の補助事業。
1998年末までに1700mを開設、大倉尾根の見晴茶屋のすぐ下まできていた。
- *全体の概況
水無堀山林道は大倉尾根を東西にまたがって計画された全長5260mに及ぶ林道である。
1992年の着工から昨年度(1998年)160mの開設で大倉尾根の西側部分1700mの開設が完了した。
今後は、大勢の県・市民の要求の中、クマタカの生息環境調査を理由に今後2年間凍結されることになっている。
- (1)全体計画:5260m H4−H16(1992−2004年)
途中大倉尾根トンネル部120m
- (2)最高海抜高度:約620m
- (3)森林面積:針葉樹175ha、広葉樹463ha
- (4)開設状態:1999年3月で1700m H10年度分:160m
- *1999年3月に終わった1998年度開設160mで、林道は大倉尾根の見晴茶屋直下
、見晴茶屋に声が届くほど大倉尾根登山道のまじか達している。
- *急峻な斜面部分に開設されたため、谷側は高いコンクリート壁、山側は急な掘削した斜面が
露出している。専門化が設計しているのであろうが、大雨による斜面崩壊の危険を感じる。